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違和感

2011/11/09

必要があって岡井さんの『斎藤茂吉』を読んでいる。
この本は不幸な本のようだ
昭和59年に砂子屋書房から砂子屋叢書として出されているが、
売れることもなく、文庫本になることもなかったようだ。
ただこの点は、確認不足のおそれはある。

この本で『あらたま』の歌の解釈を確認していたのだが、
どうにも不思議でならないことに遭遇した。
「ふり灑ぐあまつひかりに」の歌なのだが、
岡井さんは、
『茂吉の歌私記』で書いたことに、
全くと言ってよいほど触れてないのだ。
この一首に数頁割いているから、
当然触れていいはずだ。
『茂吉の歌私記』は、昭和48年に出されているから、
当然この本に書いたことに触れても
何ら差し支えがないはずなのに、触れてない。
というより、この本のことにも一切触れていない。

ということは、
岡井さんにとっては、
昭和59年当時、
この本はすでにウィークポイントになっていたのだろう。
つまり、
あの逃避行のまっただ中に書いたものについては、
もう自分としても触れたたくないのだ。
そういう気がしてきた。
今ではもうこんなこだわりはないと思うが、
昭和59年、
いや、これは講演を本にしたのだから、
57年の講演の時には、
『茂吉の歌私記』には触れたくなかったのだ。
確かに今読み返すと、
実に生々しい描写がある。
だからこそ、
読み物としては、本当に面白いのだが。
でも、その生々しさが、
57年ころには、
多分嫌になったのだろう。

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