溺れる犬

2012/04/30

坪内祐三の新刊『文藝綺譚』(扶桑社)
の「第十二夜 大相撲のないこのわずかな数ヶ月の間に」を
読んでいたら、
266頁の8行目にこんな表現があって嬉しくなった。
というより懐かしかった。

「これはまるで溺れる犬に石をぶつけているみたいだ。」

この「溺れる犬に石をぶつける」の出典は、
魯迅の『両地書』のものだ。
魯迅は、敵を倒すためには「溺れる犬に石をぶつける」
ようにとことん痛めつけないといけないと言ったのだ。
ということは、坪内の使い方は、
魯迅に照らせば正しくない。
坪内は弱い者いじめのニュアンスで書いている。
それはそれでいい。
ただこの種の弱い者いじめは、
今日のマスコミの病弊であることは間違いない。
誰かが叩き始めると、
別の者たちが、どんどん石をぶつけだすのだ。
本当にいやだ。
なぜマスコミはそういういやなことを平気でやるのだろう。
多分勇気がないのだろう。
石を投げない勇気がないのだ。
石を投げることによって
免罪符を得られるのだ。
免罪符が欲しくて仕方ない。
孤立するのは嫌なのだ。
ああ、嫌だ嫌だ。
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「週刊文春」5月3・10日号に
「大人がいま読むべきまんがランキング」が掲載されている。
第一位は、この前話題にした
羽海野チカの『3月のライオン』。
まあ、当然ですね。
この号には読書関係の特集が掲載されている。
「過去から今が見える『必読歴史本47冊』」という特集。
この中の「女性宮家論議はまずここから」のところで、
担当の保阪正康が紹介している3冊のうちの1冊が、
小田部雄次さんの『皇室』。
最近は見ないが、
小田部雄次さんは、「朝日歌壇」で
お名前をよく拝見したものだ。

4月25日の「中日新聞」夕刊の文化欄に
小島ゆかりさんが書いている。
題は「意味が分かりません」。
多分、この文章はエッセイだと思うが、
内容は、短歌に関わるものではない。
短歌に関わる情報は一切出てこない。
要するに「意味が分かりません」。
最後のエピソードには、
小島さんの愛猫「タマスケ」が登場するが、
タマスケの行為も「意味が分かりません」ということになる。

「波」5月号。
永田和宏さんの「河野裕子と私」は最終回。
こういう文章を書ききった永田さんの精神力には
ただただ敬意を表すしかない。

この「波」の「編集室だより」の頁に、
新潮社のホームページに、
小野不由美「十二国記」新潮社公式サイトオープンとあって
びっくり。
早速のぞいてみると、
何と『魔性の子』から順に、
「十二国記」シリーズが
新潮文庫から刊行されると書いてある。
しかも書き下ろし長編も加わるとある。
いよいよ小野不由美が動きだしたということですな。
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「コスモス」5月号には、
桐の花賞の発表がある。
コスモス短歌会の新人賞である。
今回は、城戸真紀さんが受賞。
愛知支部勢では、
山田恵里さんが、五番目の点を得ていた。
野村まさこさんは、10番目。
なお、野村さんは、この号の「新・扇状地」欄に、
「決算」と題する15首を発表している。
テーマは、学校でのバレンタイン騒動ということかな。
こんな歌があってびっくり。

・新任の教師の机に置かれてるチョコを数える教頭の指

「宇宙の花」欄では、
山田恵里さんの3月号の次の歌が採られている。
選んだのは、久保田智栄子さん。

・ひそやかに語る女性とふたりゐて渡り廊下は校舎ののみど

結句は秀逸ですね。
愛知勢の活躍は、本当に嬉しいですね。

なお、ぼくは「展望」欄を書いている。
前田康子さんの『黄アヤメの頃』について
「擬人法の可能性」という題をつけて書く。

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4月22日

2012/04/23

今日は、朝から中日歌人会の会合と歌会。
9時半過ぎには、名古屋市短歌会館に行く。
10時から委員会。
10時半から、総会。
まず表彰から。
功労者表彰と中日短歌賞、中日短歌努力賞の表彰。
それぞれの方に、
委員長の小塩さんから手渡される。
その後、議事。
議長の田中さんが手際よく進められて
11時半にはすべて無事終了。
その後、昼食をはさんで歌会。

定例歌会は1時半より。
司会は、田中徹尾さんと大塚寅彦さん。
二人の司会がうまいのか、
非常に和気藹々とした雰囲気で進行する。
4時過ぎには終了。

その後、慰労ということで、
委員長の小塩さん、議長の田中さんと三人で
駅前で盃を重ねる。
お酒も料理もおいしい店だった。
8時過ぎには帰宅。
もちろん「平家物語」は始まっていた。
視聴率が低いようだが、
ぼくはこのドラマは好きだな。


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「コスモス」5月号の
「あすなろ集」「その二集」の特選欄「COSMOS集」を見てびっくり。
何と、愛知支部の方が6名も入っている。
これまで、こんなことはなかったと思う。
「あすなろ集」からは、
山田恵里さん、野村まさこさん、青木紀子さん、赤江橋令子さん。
「その二集」からは、
野村歩歌さん、河合育子さん。
それぞれ一首ずつ紹介する。
まず山田さんの歌。

・暗闇を二本立たせて玄関に娘の白きブーツ浮きをり

続いて野村さん。

・嬉々として早退の準備ととのえる生徒の鞄に教科書あらず

さらに青木さん。

・誕生日一日違ふ母と孫足して百六祝ふは嬉し

そして赤江橋さん。

・笑われてもこの生き方でよかったと五人揃えば父母に感謝す

次に「その二集」の二人。
まず野村さん。

・今週の天気についてばぁちゃんは話し合いだす居間のテレビと

野村さんは十代です。この歌も初々しいですね。
次に河合さん。

・きさらぎのきつね雨過ぎ蝋梅のはなに妖しききんいろ兆す

それぞれが個性的で魅力のある歌を詠んでいます。
特選欄の歌には、題がつけられます。
そう言えば、
大松くんがブログで、
この五月号で
自分の歌が特選欄に載り、
選んだ高野さんに題をつけてもらったのが嬉しいと
書いていましたが、
大松くんのレベルでさえ、
そんなふうに感じるのだから、
この6名も本当に嬉しかったのでしょう。

因みに、ぼくが初めて特選欄に入ったのは、
亡くなられた島田修二さんの選でした。
それから、蛇足ながら、
ぼくの歌も、
柏崎さんの選で特選欄に入れていただきました。
つけていただいた題は「春浅く」。
ちょっとぼくにはもったいない題でしたね。


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4月17日

2012/04/17

大学へ行く前に中日新聞社に寄る。
中日に行くためには、
桜通線の丸の内駅から歩くしかない。
これが大変。
十分以上かかる。
特に冬場は、もろに北風を受けるので、つらい。
もちろん、今日は暖かったので、気持ちよく歩けた。
担当の方が、異動したので、
後任の方もいなくて、
全く別の方が対応してくれた。
非常に丁寧に対応してもらえたので、嬉しかった。
要するに賞状に社印を押してもらうだけなのだが、
担当者によっていろいろあるのだ。

帰りは、市役所駅まで歩き、大学へ向かう。
淑徳の星ヶ丘キャンパス。
今日は短歌のゼミなのだが、
一名欠席。就活の関係だろう。
春休みの課題の提出確認、
新人賞の応募について、
卒業論文のことなど、
いろいろと話す。
春休みにニューヨークに行ってきた学生に少し報告してもらう。
ついでにお土産のクッキーもいただく。
刈谷北の卒業生は、一人だけ会う。
交流文化学部のYさん。
いろいろ悩みがあるようだ。

駅前のジュンク堂で、
やっと水上滝太郎の『銀座復興』(岩波文庫)を手に入れる。
車中で読み始める。
面白い。
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4月13日

2012/04/13

いよいよ新学期の仕事が始まる。
今日は淑徳大学の長久手キャンパス。
2限目で「現代短歌」。
大学について早々刈谷北の卒業生に会う。
4年の男子学生。

履修者名簿を見ると、
一桁ではなかったのでほっとする。
去年は8名だった。
一桁だと少し寂しい。
今年は男子学生が多い。5人もいる。
去年は一人だけだった。
男子学生が多いのもこれはこれでいいのかなとは思う。
そういえば、
昨日の毎日文化センターは、
15人中男性は一人だけだった。
でも、歌はなかなかいいなあと思った。
講義はガイダンスと小島なおさんの歌を中心に。
若い人の歌に関心をもってもらおうと、
邪道とは思いつつ、
穴埋め問題を行った。
割りに楽しんでやってくれたようだ。
帰り際に、今度は2年の女子学生にも会う。
なぜか刈谷北の卒業生に大学で会うとほっとする。
来週は星ヶ丘キャンパスも始まる。
星ヶ丘にも何人かいる。
会えるかな。

帰る途中、久しぶりにらくだ書店に寄る。
文庫本を2冊購入。
してしまった。
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面白い本

2012/04/10

ぼくにとって「面白い本」は、
読み終えて、読んでよかったという気持ちになれて
なおかつ人に薦めたいと思う本である。

「3月のライオン」を一気に7巻まで読み終える。
主人公の思いが、
黒をバックに横書きで流れているので、
最初はとまどったが、
内容はいたく感心した。
時として涙すらにじんできた。
生きることと孤独であることがテーマであるためだろう。
漫画を侮ってはいけないと、
声を大きくして言いたい。
そう言えば、大友克洋がまたブームになりかけているが、
これも嬉しいことだ。
先日あるはずの「アキラ」を探したが、
半分ほどしかなかった。
どこへ行ってしまったのだろう。


川本三郎さんの『白秋望景』を何とか読み終える。
大冊だが、内容はとても濃い。
ただ後半は若干だれたという感じはしたが。
白秋の魅力が思う存分書かれていて、
実に気持ちがいい。
特に童謡について丁寧に書いている。
白秋の童謡は本当にいい。
その魅力を解き明かしているから、
思わず歌いたくなってしまう。
「白秋礼賛」というべき本である。
このところ白秋に関わる出版が多い。
白秋の再評価の機運も出てきたのかなと思う。

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朝日歌壇

2012/04/09

4月8日の朝日歌壇を見て少し驚く。
永田和宏さんが、
吉本隆明を詠んだ歌を5首採っている。
馬場さんも一首採っている。
高野さんは採らず。
佐佐木さんは、日本にいたら採っていただろう。
驚いたのは、まず採られたということ。
それから、こんなにも吉本を詠む人がいるということ。
ぼくの本音は、
吉本を詠んでほしくない。
詠むひまがあるなら、
吉本の本を読んでほしい。
特に次の歌には、カチンと来た。
最近は、好好爺然としてきて、
仏の何とかと言われているのだが、
この歌はいけない。

・読みもせず捨てもしないで四十年手もとに置きし『共同幻想論』

1970年前後の大学のキャンパスでは、
吉本の本はファッションアイテムの一つとなっていた。
これみよがしに『共同幻想論』を持ち歩く
女子学生がいたことを今も覚えている。
そういう学生に対して、
ぼくはいつも不快感をあらわしていたような気がする。
この作者も女性だから、
下酢の勘ぐりもかもしれないが、
そういう女子学生の一人ではなかったのではないかと思う。
でも「手もとに置きし」というのだけは、
よしとしよう。
そして、それならぜひ読んでほしい。
吉本の言う「自己幻想」「対幻想」「共同幻想」という
概念がどのように生まれてきたかを
読む時、創造の力というものの凄さを
身にしみて知ることになる。
考えることがどういうことかが
吉本の本を読むとよく分かるが、
特に『共同幻想論』は、
そこのところが本当に分かる。
もちろん、厳しい言い方だが、
読んでも分からない人は、
考えることがもうできなくなっているのだと思う。
だから、ぼく自身今読んで、
かつてのように理解できるかどうか不安だ。

それと、ぼくの場合は、
吉本を信用していいと確信したのは、
「マチウ書試論」である。
その中に用いられた「関係の絶対性」という概念が
当時のぼくの生き方に大きな影響を与えた。
今でも、この「関係の絶対性」という言葉を
眼にすると、
学生時代に抱いていたさまざまな悩みを
あっという間に解消してくれた瞬間を思い出す。



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1000番

2012/04/05

松尾祥子さんの第3歌集『シュプール』(柊書房)が先日届いた。
奥付を見てびっくり。
奥付には、コスモス叢書の
叢書番号が記されているのだが、
何と1000番。
因みに、
1968年に出された鈴木英夫さんの歌集『えとるりあ』は
55番。
44年経って1000番だから、
一年に20冊以上は出されていることになる。
途轍もない蓄積だとつくづく思う。
コスモスの三鷹の編集事務室には、
その1000冊が並んでいるのだろうか。
いやあ、そんなスペースはないような気がするが。
並んでいたら、まさに壮観としか言いようがないだろう。

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