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『十二国記』ロスで、
今年に入って、まだ一冊も読了していない。
わが人生でもこんなことはいまだかつてなかった気がする。
今日昨日購入したばかりの島田潤一郎の『古くてあたらしい仕事』(新潮社)を読み終えた。
島田氏は、夏葉社という出版社を一人で切り盛りしている。
夏葉社の本には、私小説系の作家の本が多いので、
ぼくも何冊かは持っている。
中でも『庄野潤三の本 山の上の家』は、これからずっと
大切に持っていたい本の筆頭である。
もちろん歌集以外で。
島田氏がなぜ夏葉社という出版社を起こすに至ったかが
丁寧に書かれている。
起業を考えている人たちには興味深い内容だと思う。
しかし、いわゆる起業の範疇には入らない内容なので、
お金儲けをしたいレベルの人は読まないほうがいいだろう。
本当に自分の力で回りの人を喜ばすことをしたいと考えている
人なら、ぜひ読んでほしい本だ。

最後のほうに、
庄野潤三家の人々が登場してくるが、
ここがぼくにとっては一番うれしい。
庄野の小説の登場人物のモデルとなった人たちの
生きる姿が描かれているのだから。
庄野潤三ファンにはぜひ読んでほしい。
ぼくは迂闊にもこの本が昨秋出されていたことを知らず、
昨日手に入れたこの本は3刷だった。
やはり昨年の秋はひたすら『十二国記』を読んでいたから、
こんな大事な本が出されていたのに気づかなかったのだ。
でも、両方とも新潮社というのも、なんだか不思議な感じだ。

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「週刊文春」の1月30日号を見ていたら、
「ベストセラー解剖」欄に
稲垣栄洋氏の『生き物の死にざま』(草思社)が取り上げられていた。
何と現在5刷で六万部出ているとのこと。
動物学的知識を駆使した、
しかも生き物の健気に生を全うするさまを描いている所が人気の理由なのだろうか。
読者の6割が女性とのこと。
稲垣氏は、静岡大学の大学院の教授。
植物関係のエッセイ集を何冊か出している。
しかし、稲垣氏が短歌を詠むことは知られていない。
もちろんペンネームを用いている。
最新作を一首。

・透明な光が積もる草の上 からすあげはの命消えゆく

やはり「命」が詠まれている。


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今日届いた 「滄」104号の編集後記で
中井昌一さんが以下のことを記している。
奈良橋善司という人の真骨頂と言うべき姿を描いている。

1992年、首里城が再建した直後、故奈良橋善司氏から
電話で、「見に行く、飛行機も宿も取った。羽田に○○時
に来い」と電話があり、二人で沖縄に飛んだ。首里城と
その周辺を二日かけて見歩いた。その首里城が焼失した。
テレビで全てが燃えてしまった時、故人の「おい焼けたぞ」
の声が聞こえた。「うん、焼けてしまったね」と思わず答えた。

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今日、さいたま市教育委員会から手紙が届いた。
何だろうと思ったら、
「第20回記念現代短歌新人賞」の受賞者決定の報告だった。
確かに推薦はしたが、
他の賞の場合は、特に結果報告をいただくことはないので、
少し驚いた。
受賞作品は、川島結佳子さんの『感傷ストーブ』。
ここまで言っちゃうのという感じの歌集。
歌林の会のメンバーだが、
歌はもう突き抜けているね。
かなり面白い歌が並んでいる。
ただこういう歌が嫌いな人も多いだろうなという気はする。
ぼくは好きだ。

・診察時間二分の耳鼻科に何がある。子どもは全身全霊で泣き

・おい、少年。面白いのか母親の膝上で読む『週刊女性』

・「お大事にどぞー」と言って看護師がオート機能のお辞儀をしてくる

一首目、わが孫も耳鼻科の名前を言った瞬間、泣き始める。
耳鼻科の診察室は、たぶん魔窟なのだ。
とんでもない怪物がいて、子供を痛い目にあわせるのだろう。
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「短歌往来」2月号の巻頭作品21首は、
奥村晃作さんの「諏訪湖畔また諏訪大社」。
奥村さんは年男なのだが、
84歳になるまで、諏訪大社を訪れたことがないとあり驚く。
だって奥村さんは飯田の生まれなのだから、
諏訪はそんなに遠くにあるわけではない。
この21首の中にこんな歌がある。

・諏訪大社「前宮一之御柱」に手を伸べて妻おずおずさする
・御柱われもさすれり生きの上のパワーを得んと白木をさする

一首目に奥さんが登場している。
奥村夫妻はこんなふうに仲良くあちこちに出かけているようだ。
奥さんもコスモスの歌人である。
たまたま「六花」の2号を見ていたら、
こういう記事があった。
「奥村晃作へ16の質問」。
その三番目の質問はこんな質問。

③奥様は歌人の佐藤慶子さんですが、普段作品を見せたりしていますか。

この質問に対して超真面目な奥村さんは、次のように答えている。

「作品を見せ合ったり、見せることは一切しません。」

そうなんだと改めて思った。
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昨日はコスモス短歌会愛知支部の歌会。
出席者は8名。
新年なるも、それぞれやむをえない用事を抱えていて
欠席の連絡多し。
ただ正確に言うと、会員は8名で、
会員外1名、見学3名だから、
実際には12名による歌会になった。
見学の3名は、愛知淑徳大学の
ぼくの講読演習Cを受けている学生たち。
一度本物の歌会に出てみたいという彼女たちの願いを
実現したわけだ。
この3人には当日詠を出してもらって、
会員に講評してもらった。
終了後、3人を連れて平和園へ。
平和園では、
3人の中に東直子ファンがいるので、
まずは例のサイン帳を出してもらい、
東さんのサインを探す。
結局小坂井君が見つけてくれて、
しばし鑑賞。
その後4人そろって、短歌を書きつける。
2時間ほど飲み食いして帰途に着く。
そうそう小坂井くんに「かぱん」12月号をいただく。
穂村さんとの鼎談が掲載されている。
要するに、小坂井くんと戸田響子さんの歌集特集。
なかなか読み応えがある。
ただこんなに贅沢な編集をして、
大丈夫なのかなあと思った。
とにかく自由な結社の自由な編集ぶりには感嘆するしかない。


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「遠泳」

2020/01/18

「遠泳」の作品について書こう書こうと思って、
何と半年以上経ってしまった。
「遠泳」という短歌同人誌が発行されたのは、
平成31年1月20日。
もう一年になる。
ただ頂いたのは、春になってからだと思う。
榊原紘さんから送ってもらった。
その榊原さんの20首「名画座」から紹介してゆきたい。

・生活に初めて長い坂があり靴底はそれらしく削れる

下句がいい。靴底が減るということをこんなふうに詠むのがいい。
発見に対する距離感がいいのかな。
発見にのめりこまない。

・飴玉を右頬に寄せかえすときひかりは百合樹をくぐりくる

「百合樹」には「ゆりのき」とルビがふってある。
下句の繊細な感覚がいい。
そして、上句の具体もいい。
「寄せかえす」が特にいい。

・機嫌なら自分でとれる 地下鉄のさらに地下へと乗り換えをする

初句、二句の断言的なものいいがいい。
隣に誰かいるのかもしれない。
しかし、隣の誰かを無視しつつ降りてゆくのだ。

・雪柳 きみの死に目にあいたいよ ジャングルジムの影が傾いで

雪柳をこんなふうに詠まれては、嫉妬をおぼえるしかない。
というのも、この場所は、
榊原さんと共有しているような気がしてならないのだ。
どこの町のどこの公園か分かるような気がする。
だから、余計に嫉妬を覚える。
一度、榊原さんに共有事項か確認してみよう。

・硝子戸の桟に古びた歯ブラシを滑らせ春の航跡のよう

この歌が一番好きな歌だ。
上句は、ほとんどアララギ的描写なのだが、
滑らせからの展開が実にいい。
世界の視界が一気に開けた気がする。


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「合歓」87号が届く。
まず読むのが、久々湊盈子さんによるインタビュー。
今号は、「潮音」の木村雅子さん。
最後のほうで、木村さんが
こんな発言をしているのに、少し驚いた。

「吉永小百合さんのお母さんと私の実母満喜子が親しかったん
です。子供の頃、泊りがけで遊びに来て、一緒に海水浴をした
こともあります。妹さんも一緒でした。「赤胴鈴之助」に出るよう
になったのはその後です。」

驚いたのは、吉永小百合が「赤胴鈴之助」に出ていたということ。
小学生時代に「赤胴鈴之助」を見た記憶がある。
あの映画に出ていたのか。
全く知らなかった。
ぼくの吉永小百合の記憶の最初は「キューポラのある町」では
ないかという気がする。
それも実はあいまいなのだが。



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「塔」1月号

2020/01/17

「塔」1月号の20頁に
「塔短歌会編集部一覧」という役割分担表が掲載されている。
その中に「セクハラ相談受付窓口」という役割分担があり、
三名の方のお名前が載せられている。
初めは驚いたが、
こういう時代になってしまったのかなあとつくづく思う。
ある意味では、時宜にかなった対応というべきだろう。
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訃報

2020/01/14

今日寒中見舞いが届いた。
どなたが亡くなったのかと思いつつ、
文面を読み、驚く。
現役時代から親しくしていたある出版社の社員だった方だ。
いつもエネルギッシュで、労組を率いて会社の立て直しにも
尽力した方だ。闘争の記録もいただいていて、
退職後も、音楽関係のプロデューサーの仕事をされていた。
昨年12月12日に亡くなられた。
享年66歳。若すぎる。残念でならない。
そして、ネットのニュースで、
坪内祐三さんの死を知る。
昨日亡くなられたとのこと。
「週刊文春」の最新号には、連載が載っていて、
今日喫茶店で読んだばかりだ。
坪内さんの著作は、三分の二くらいは読んでいる。
まだまだ書いてほしいことは山ほどあったのに。
こちらも本当に残念でならない。
ただ坪内さんの日記のシリーズをかなり読んだが、
こんな生活していて本当に大丈夫かなあと思ったことは、
何度でもあった。
東京を中心に毎晩飲み歩いているという感じだった。
「週刊文春」は困るだろうなあ。
あれだけの内容を毎週書ける力のある
文筆家はそうはいないだろうから。

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