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池田はるみさんの新刊歌集『亀さんゐない』にこんな歌を見つけた。

・ひとの世にひとりでママが育ててる女の子ゐて歌会にくる
・ママの横にちよこんと坐り折々をあそびのやうに歌評聞いてる
・五歳だがきれいな字を書くあきちやんに「すき」と書かれてうれしよわれは

ぼくは、子供のいる歌会に出た記憶はない。
たまたまシングルマザーがコスモスの会員にいなかったからだろう。
ただ歌会の後の懇親会に子供が同席していたことはある。
その一人は、そういえばシングルマザーだった。
女の子二人で、何とバレーを披露してくれた。

「まひる野」のKさんが、
かつて娘さんを連れて歌会に参加していたという話は聞いたことがある。
こうやってあれこれ思い出してみると、
子どもを連れての歌会参加は、
そんなに珍しいことではないかなと思い始めた。
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またまた不確かなことを書いてしまった。
土屋文明と近藤芳美の庭のアカンサスは、
白玉書房の鎌田敬止さんからもらいうけたものではないかと
書いたが、松村正直さんからコメントをいただいた。
近藤芳美の『アカンサス月光』の「あとがき」に
土屋文明からもらいうけたと書いてあるとのこと。
ということは、初めに土屋文明が鎌田さんからもらいうけて、
その後、近藤芳美に分けたということになる。
ただ、宮英子さんが間違っていたというより、
英子さんも近藤芳美の庭にあることは
知っていたので、当然鎌田さんからもらいうけたものと
思い込んでいたのだろう。
英子さんは「アカンサスのえにし」と題した文章で、
こう書いている。

「鎌田さんのアカンサスは、訪れた歌人たち、
土屋文明、近藤芳美、宮柊二の庭に根付いた。」

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対面授業

2020/09/28

大学の後期の授業が始まる。
三コマのうち、二コマは、対面授業。
月曜日の2限、3限。
久しぶりに学生たちの顔を見ることができた。
今年の一月半ば以来だ。
オンラインとは全然違う世界だ。
声の出し具合がうまく調節できなくて、
3限の途中でかなり疲れが出てきた。
慣れるしかない。
学生の数は、当然例年より少ない。
例年40人前後はいる「現代短歌」の受講生も、
20人強だ。
まあ、とにかく、
正しく恐れてやっていくしかない。

木曜日のも別の大学の一コマがある。
この大学は、原則対面授業だから、
学生も相当多そうだ。

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「幻桃」9月号の荻原裕幸さんの連載「短歌のふしぎ」にも
岡井さんの思い出が語られている。
『短歌パラダイス』に関わる歌合せの思い出である。
岡井さんのご自分の歌への執着がどのようなものか
語られている。
「レ・パピエ・シアンⅡ」の9月号の特集2は、
「岡井隆さんを悼む」。
大辻さん以下5名の同人が書いている。
大辻さんの文章の題は、
「岡井さんに叱られたこと」。
岡井さんに叱られた人は、そんなにはいないと思う。
ぼくの文章についても、苦言はあったようだが、
直接どうということはなかった。
そんにはいないから、
この大辻さんの文章は貴重だ。
それにしても若い頃の大辻さんはかなり生意気だったんだと驚く。
岡井さんが怒るのも当然だなと納得した。
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記憶の捏造

2020/09/23

前回書いた内容の確認のために、
宮英子さんの『葉薊館雑記』を見つけ出して読んだのだが、
愕然とするしかなかった。
宮柊二邸のアカンサスは、
近藤芳美邸から分けてもらったものではなかった。
白玉書房の鎌田敬止さんから分けてもらったものだと、
「あとがき」に書いてある。
因みに近藤芳美も土屋文明も、
鎌田さんから分けてもらったようだ。
だから、近藤芳美と宮柊二の親密さについては、
全く根拠のない話なのだ。
どうしてこんな根も葉もないことを書いたのだろうか、
われながら呆れている。
まさに記憶の捏造だ。
多分、戦後派歌人について書いた本の内容を
無意識のうちに結びつけてしまったようだ。
ただ、宮柊二が、昭和20年代、
酒の席でいろいろあったというのは、間違いない。
ところで、宮柊二と近藤芳美との交流は、
はたしてあったのだろうか。
朝日歌壇の選歌で顔を合わす程度だったのだろうか。
また調べてみよう。

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「幻桃」9月号に篠田理恵さんという方が
「アカンサスふたたび」という文章を書いている。
この題を見ただけで、
何が話題なのか分かる人は多くいるのでは。
特に「未来」の方は。
篠田さんは、きさらぎあいこさんからいただいたアカンサスが
咲いたことを書いている。
これだけだと別段書く理由もないだろうということになる。
ところが、篠田さんは、きさらぎさんからいただいたアカンサスを何度も枯らし、
今年遂に咲いたので書いたのである。
その喜びを次のように書いている。

とにかくアカンサスである。土屋文明が愛し、
近藤芳美が愛した花の末裔がわが庭に咲いた。
折しも近藤芳美の命日は六月二十一日、
記念すべき二〇二〇年六月である。

さて、ここからが本題。
実は、宮柊二邸にもアカンサスはあったのである。
今もあるかは知らない。
もちろん宮柊二邸のアカンサスも
近藤芳美の庭に植えられていたものである。
なぜアカンサスが宮邸に届いたのかその経緯は
かつて宮英子さんが書いていた。
今手の届くところに、その本がないので、
詳細は書けない。
とにかくアカンサスがあったのである。
戦後派の歌人たちの交遊はかつては親密だった。
そういう点では、現在よりもよほど
温かい人間関係があったのだろう。
もちろん酒を飲んでの大ゲンカにも事欠かなかったようだが。
とにかく人間臭さがあったのだ。


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「まひる野」9月号を読む。
篠弘さんの「最近の諸誌に探る」は、
当然と言えば当然か。
「未来」8月号巻頭の岡井さんの作品。
篠さんは、「後記」でも岡井さんについて書いている。
特に晩年の詩作について。
富田睦子さんの時評「短歌史と歌人史」が興味深かった。
こんなことを書いている。

「私は、短歌史と並行して歌人史があるといいと思う。
どのような歌人がどのような交流をしたか、また、ひとりの
歌人がどのように生きて、その都度どんな短歌を残したのか。
 適当に区切った時間の流れの中に人間を置くのではなく、
人間が生きている時間の中になにかの凝り、なにかの交錯
を見るような、そんな視点が必要ではないかと思う。」

主旨には賛成。
でも、実現は難しい。
これを実現するためには、膨大な資料をが必要だ。
資料をどうやって集めるか。
国立国会図書館で検索して送ってもらうというのも、
厖大な時間がかかる。
あるいは、北上市の詩歌文学館に通いつめるか。
これも大変だ。
ただ、こういう作業をやり遂げた歌人はいる。
加藤淑子さんだ。
加藤淑子さんの『山口茂吉』は、
富田さんが言うような書である。
山口茂吉だから、
当然メインで登場するのは、斎藤茂吉である。
加藤が描く斎藤茂吉は、本当に人間味があって、
人情深い近所のおじさんという感じがする。
気難しい人物とは到底思えない。
加藤さんは、斎藤茂吉についても、
富田さんが考えるような仕事をしている。
しかし、私は、加藤さんが、いったいどのようにして、
あの厖大な資料を手に入れたのかは
分からない。
東京の人だから、
国立国会図書館に通いつめたのだろうか。
あるいは、山口茂吉の遺族から相当の資料を譲り受けたのだろうか。
とにかく、歌人史というのは、
とんでもなく資料と時間が必要な仕事だと思う。
加藤淑子さんの後を継ぐような歌人は、
今後あらわれそうもないが。
私もかつては考えたが、もう時間が足りない。
資料も一部は、寄贈してしまったので、
なんともならない。
でも、細々とやろうかなとは思っている。

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「八雁」が届いた。
阿木津英さんの連載「続 欅の木の下で」は、
当然と言えば当然なのだが、
岡井さんについて書いている。
阿木津さんも「岡井さん」という呼称を使っている。
確かにぼくらの世代は「岡井さん」としか呼びようがない。
岡井さんの優しさということを考えた。
岡井さんは、いつも自分より若い者の言うことを聞いてくれた。
賛成とか反対ということはなかったような気がする。
ただ聞いてくれた。
それが岡井さんの優しさではなかろうかと思う。
さて、阿木津さんの文章だが、
こんなことが書かれている。

また少し話はそれるが、石田比呂志はそういうときの岡井隆に
寄り添って力づけた。地上の泥にまみれて生きてきた石田比呂志
の本音による励ましは、たんに私利私欲から出るものとは
ことなるニュアンスがあっただろう。

「そういうとき」とは、
岡井さんが歌会始めの選者になり、
「変節」を云々されたころ。
石田さんは、一見豪放磊落で、
とんでもない人だなあと初めて会った時は思ったが、
本当に優しい人だということは、
そのお会いした日以降じわじわと伝わってきた。

今引用した次にはこんなことが書いてある。これも優しさに関わる。

石田は四面楚歌になっている者にそっと寄り添っていく
ところがあった。「未来」を出て行かざるを得なくなった
田井安曇に対しても、そうであった。

田井さんが「未来」を出ていかざるをえなくなったのは、
もちろん岡井さんが「未来」に復帰したからなのだが。
要するに石田さんは、苦しむ者には、立場は関係なく
寄り添うことのできる人だったのだ。

阿木津さんは岡井さんについて4ページ書いている。
あの世の岡井さんは、そんなことを思っていたのなら、
もっと早く教えてくれてもよかったのにと言っているかもしれない。


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