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ちくま文庫の新刊で『神保町「ガロ編集室」界隈』が出されることを知り早速手に入れた。
著者は高野慎三である。
かつて「ガロ」の編集にたずさわっていた。
高校生時代「ガロ」を読んでいたが、
そんなに熱心な読者ではなかった。
ただ今にして思うと、非常に残念なことをしてしまったとつくづく思う。
つげ義春の初出が掲載されている「ガロ」も持っていたのだが、
みんな処分してしまった。
一冊でも残しておけばと今更ながらに思う。
本当に後の祭りというしかない。
ところで、この本を手に入れた一番の理由は、
つげ義春の息子さんの正助くんが、
巻末の高野との対談に登場しているからである。
正助くんについては、母親の藤原マキさんの日記でしか
知ることはなかった。
今回正助くんの発言を読んで、
つげ義春やマキさんと比べて
ずいぶんしっかりした大人なんだと感心してしまった。
要するに先入観があったから、いけなかったのだ。
つげ義春の近況についても語っているので、
つげ義春ファンの方は、必読だと思います。
ただし、残念ながら、
新作を描くということはなさそうです。
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「NHK短歌」3月号の寺井龍哉さんの入選歌・佳作歌の中に、
高橋みどりさんのこの歌が選ばれていた。

・面談は「三者」にしますと伝えれば祖母も呼ぶかと聞く生徒あり

今回のテーマは「笑える歌」。
確かにこの歌は、教員経験者には、笑いのとれる歌だ。
多分生徒の「三者」は、
自分と母親ともう一人。
担任は「三者」ではないのだ。
だから、生徒は、
私とお母さんの他に誰を呼ぶんだろうと考えて思いついたのが、
祖母なのだ。
これが「父」では面白くない。
三者面接に呼ばれるはずのない「祖母」が登場するから面白い。
ただ、現実には、
入学式、卒業式に、祖父母が参加する時代だから、
この生徒の発想も別に特殊ではなくて、
「三者」なら「おばあちゃん」にきてもらうのかなと
思ったのだろう。
それにしても、担任の高橋先生はぎょっとしたことだろう。
女三人を前にして、面接なんてできるのかしらと。
そうか、この生徒の性別は分からないんだ。
でも、女子生徒でないと面白くない。

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一年前

2021/02/22

一年前の今日、
東京の新宿の明宝ビルで、
「灯船」16号の批評会が開催された。
ゲスト批評者の藤島秀憲さんを含めて
25名が参加。
あれ以来、一度も批評会は開催されていない。
今年も果たして開催できるがどうか。
目途は全く立っていない。
あれ以来、
東京へも行っていない。
東京へ行くことができるのは、
早くても今年の秋以降になるかな。
仲間と会えないというのは、
何ともつらい。
会えなくても、雑誌を作ることはできるが、
お互いの作品について、
生の声で語り合うということがないのは、
やはり手ごたえがない。
あと、どれくらいの我慢になるか。


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本日『鬼滅の刃』全23巻読了。

現代版鬼退治の物語、何とか読み終える。

後半は加速がついてしまい、

読んでいるのか、見ているのか分からない状態になってしまった。

でも、読んで後悔はしていない。

映画は見ていない。


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「塔」2月号の田宮智美さんの歌。実に刺激する歌だ。

・老後資金崩して編めば一七六頁の第一歌集は墓と思いぬ

そうか「墓」なのかと思いつつ、
でも、田宮さんは、歌集を出して歌人になったことは間違いない。
歌集を出したからといって、
それで歌人になれるわけではない。
ただし、ここでぼくが言う「歌人」というのは、
ぼくが評価できる歌を詠む人という意味であって、
普通名詞ではない。
普通名詞なら、
歌集を出した人は全員歌人でいいということになるだろう。

もちろん田宮さんの第一歌集というのは、
『にず』(現代短歌社)のこと。
昨年7月25日発行。
こんな歌もいい。

・「りんしょく」は臨時職員の略にして「吝嗇さん」とは呼ばれていない
・休日のわたしがガラス戸に映りふつうの女の人のようなり





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山崎方代

2021/02/13

川島結佳子さんの『感傷ストーブ』にこんな歌がある。

・川島さんは山崎方代を読みましょう。「かたよさん」ではないことを知り

「かたよさん」に驚いた。
「かたよ」と読むのは、なかなかものだ。
ぼくは「まさよ」と読んだ。
そして、当然女性と思っていた。
川島さんもそうだ。この歌の後に次の歌がある。

・軍隊時代の山崎方代の画像あり女性でないことも分かった

「ほうだい」と読むという発想がそもそも湧かないから、
山崎方代は、最初はいつも女性として登場してしまう。
もちろん、歌を読みだすと、すぐ男性と分かるのだが。

ところで、川島さんの方代を詠んだ二首の後に、
次の二首が置かれている。

・筆圧をいったいどこに置いてきたのだろう君の困った文字は
・「ねぇセックス、してくれないかな」と私言うお冷の氷からから揺らし

一首目の「文字」は違和感がある。
ぼくなら字余りにして「くせ字は」とするのだが。
二首目の「お冷の氷」のリアリティーに、脱帽。
とにかく下句は素晴らしい。
上の句については、特にコメントしない。
すでにいろいろコメントはあったようだから。
参考までに言えば、
「八雁」の1月号の大川さんの評論に、
この歌は取り上げられている。


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「まひる野」2月号の「マチエール」のトップは北山あさひさん。
8首掲載。その中から5首紹介する。
とにかく元気いっぱいの歌で、励まされてしまう。
ただ一首目の「ガースー」については、
ぼくは同情的だ。あの人が放り投げた政権をやむなく
引き受けてしまったのだから。
あの人は結局国民のリーダーになれない人だったのだろう。

・国民総見捨てられ社会「ガースー」のへらへら笑いに泣いてしまいぬ
・税金を払いたくないぜったいに払いたくない雨のち吹雪
・大分や彦根や岐阜より届きたる手紙がむむっと御守りになる
・おじさんがおじさんと作るおじさんのための社会の隅に騎乗す
・小樽生まれ小樽育ちのわたくしの歌集が小樽図書館にある

三首目は、たぶん『崖にて』への礼状が全国から届いていることなのだろう。
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「うた新聞」2月号の「野ボール応援歌!」の第11回で
中日ドラゴンズを書きました。
中日のファンは、歌人にはあまりいないらしく、
ある夜突然いりの舎から電話がありました。
「鈴木さん、中日ドラゴンズのファンですか」と。
もちろんと答えました。
ほとんど生まれた時からファンだから、そう答えるしかない。
生まれた時からのファンという理由は、
読んでもらえばわかると思います。
とにかくかなり年季の入っているファンなので、
とりあげた選手も、
50代以下の人は知らないのでは。
ロッテファンの大松くんは多分知らないだろうな。
カープファンの桑原さんなら知っていると思うが。
今年戻ってきた福留などは、
ぼくに言わせれば、かなり新しい選手だ。
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北山あさひさんの第一歌集『崖にて』について、
「コスモス」2月号の「展望」欄で書いています。
コスモスのホームページで読むことができます。
とにかく、読むと元気をもらえる歌集というのが、
北山さんの歌集の特長でしょう。
現場の歌という側面もあるから、
余計にそう思うのかもしれません。

なお、「コスモス」の展望欄は、
要するに時評的文章を載せる欄ですが、
昨年の四月からぼくと大西淳子さんのコンビで書いています。
二年という約束ですので、
このコンビは、来年の3月号まで書くことになっています。
数十年前には、
松平盟子さんとコンビを組んで
書いていたこともあったのですが、
いやあ、長く書いていますね。
時評的な文章を書くのが嫌いではないから
続けることができるのでしょう。
ただ、できるだけ今のことを書こうとすると、
いろいろな出版物に目を通さないといけないので、
負担になりますね。
だから、最近は、基本的に総合誌はあまり読まない。
気骨のある編集者が減り、
総花的な企画が多く、
取り上げようという気があまり湧かない。
だから、時評的な文章で、
律儀に総合誌の特集について書いているのを見ると、
えらいなあと思います。

今はとにかく、読んで、いいなあという歌集に出会うことができるのを
願いつつ書いています。
そうすると、なぜかそういう歌集に出会えるから不思議です。



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最後の晩餐

2021/02/03

今日届いた小見山輝氏の『歌の話Ⅲ とりふね』に
「最後の晩餐」と題するエッセイがある。
元々は「最後の晩餐」という「現代短歌」の特集記事に
ついて書いたものである。
24人の回答の中で、小見山は、志垣澄幸、高野公彦、時田則雄の回答を取り上げている。
高野公彦の回答中の作品は以下のとおりである。
もちろん孫引きである。

・口中に蝉を含みて逝きたしや高野公彦白寿の頃に

この歌について、小見山は次のように述べている。

蝉を含むというのが解らないのだが、横笛の口の
あたりのことか。或は蝉声そのものか。百歳を前に、
蝉を口中に含んで逝きたいのだそうだ。しかし読む
方が解し得ないのが残念。

とんでもない読みなのだが、知らない者には当然分からないのだ。
私も知らなかった。
ただこの本の編集者はとても丁寧な方で、
ちゃんと以下のような注を入れている。
良心的編集と言えよう。

編集者注  「龍」掲載後に古代中国の風習と知る

実にありがたい注だ。
それにしても、高野さんはどこで、こんなことを知ったのだろう。
なお、この本の編集者は、娘さんの小見山泉氏。
それにしても「とりふね」という題はよく付けたものだと感心した。
コスモスの人間としては、恐れ多くてこういう題はつけられない。




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