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3月26日に、河野裕子さんの『みどりの家の窓から』について、
以下のことを書きましたが、これはぼくのポカでした。

「この内容なら再刊しても、かなり売れるのではないかと思っているのだが、
そんな話題は一向に出てこないし、
そもそもこの本のことを知らない人が圧倒的に多いのかなとも思いだした。」

というのも、これを書いた後、
松村正直さんから指摘をいただきました。
増補本の形で、すでに刊行されているとのことでした。
それで、書庫で確認したところ、
何と『みどりの家の窓から』があった隣にありました。
タイトルは変わっていて、
『たったこれだけの家族』(中央公論新社)となっています。
2011年7月10日に刊行されています。
増補版ですので、『みどりの家の窓から』には
載せなかったエッセイも入れられています。
それから、永田淳、永田紅選の「河野裕子の歌100首」も
載せられています。
松村さんによると、すでに絶版とのことでしたが、
「日本の古本屋」にはわりに安価で出されています。
ただ、『みどりの家の窓から』に入っていた写真は、
一枚も掲載されていませんでした。
元の写真がないと載せることは無理だったのでしょう。
ぼくには、あの写真のページがとても貴重なものに思われてなりません。
ということで、、『みどりの家の窓から』は入手困難ですので、
『たったこれだけの家族』を手に入れて読んでください。
とてもいい文章が並んでいます。



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「本の雑誌」4月号の表紙を見てびっくり。
まず特集は、こう書いてある。

「短歌の春!」。

そして、さらに惹句はこう。

「百年で一番の「短歌の春」がやってくる!」。

総ページ数26頁。
いやあ、すごい!
やはりの「短歌のブーム」が来ているのかなあ。

実はまだ数ページしか読んでいない。
読んだのは、
「一サラリーマン編集者の日乗」。
昨年二月に亡くなった西村賢太さんの担当編集者が、
昨年の1月29日から今年の2月5日までの西村さんに
関わる内容を日記仕立てで書いている。
買うときは、この記事のことは知らなかったので、
「短歌の春!」に感謝。
でも、本当にブームは来ているのかなあ。
誰か、データを示してくれると嬉しいのですが。



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「短歌研究」4月号の永田和宏さんの30首にはこんな歌がある。
お孫さんの歌だ。

・櫂と紅と家族三代講演会いちばん緊張してゐるわれか
・あなだがいちばん喜んだらう歌の家と呼ばれて櫂と登壇をする
・われの背を越えたる櫂を見ることかなはざりしか君の一世は

ところで、つい最近届いた永田紅さんの
第五歌集『いま二センチ』(砂子屋書房)にも
櫂くんは登場している。

・甥っ子に背を越されたる叔母さんは叔母さんなりの感慨に満ち
・おもろくて人懐っこい櫂なれど多忙でなかなか遊んでもらえず

ただこの櫂くんは、10年ほど前の櫂くん。

最後に『光の鱗』に詠まれている櫂くん。
受験生の櫂くんだ。

・二人での旅は初めて十八の櫂の後期試験に付き合う
・試験終えし櫂と落ち合い子が四年住むかもしれぬ町に寿司食う

島根県の大学受験に付き添った旅の歌の一連の中にある歌。
残念ながら、櫂くんは、この大学に合格せず、
浪人して、翌年、
愛媛の大学に行くことになる。
永田さん歌の講演会は、
松山の子規記念館だから、
多分、愛媛の大学にいる櫂くんは、
永田さんに引っ張りだされたのでは。
それなら、辻褄は合う。





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川上まなみさんから、
『日々に木々ときどき風が吹いてきて』(現代短歌社)という
少し、いやかなり題の長い歌集が届いた。
若い人の歌集をいただいて、
すぐここに書くということはほとんどないのだが、
なぜかこの歌集はぼくには気になる歌集だ。

・生徒らは午後の国語をやりすごす雨に濡れてく景色を見つつ

ぼくは元国語の教員だから、こういう歌は分かりすぎるくらいわかってしまう。
特に評論を読んでいる時の窓の外の変化はつらい。
どう考えても、窓の外のほうが面白い。
まして、雪が降ってきたら、最悪だ。

・消しゴムを投げた生徒を見逃すか叱るか迷う三月の朝

若い時はこんなことはよくあったなあ。
誰が投げたかは、だいたい見当はついているのだが、
さて検挙するかどうかというと。

・雪の降る窓を背負っているような子の居眠りに静かに触れる

ぼくの場合は、居眠りしている子を起こすことはない。
まず周りの子をあてて、目覚めを誘う。
基本的に老獪な手段を使う。

・会うたびに「先生、ねむたい」という生徒の眠気をもらって戻る教室

確かにこんなような生徒は昔、よくいた。
どんなふうに返答したかは、
もうまったく覚えていない。
この歌集の学校に関わる歌を読んでゆくと、
高校の教員時代が懐かしく思い出される。
いいことも嫌なこともたくさんあった、
あの頃をついつい思い出してしまう。




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河野裕子さんが、永田家のアメリカでの生活を書きつづった文章を
まとめた本がある。
1986年に雁書館から出された『みどりの家の窓から』である。
この本をぼくは「日本の古本屋」で見つけて購入した。
2004年の12月に購入している。
この本に謹呈箋が入ったままで、
河野さんの名前が自筆で書かれている。
以前から不思議に思っているのは、
この内容なら再刊しても、かなり売れるのではないかと思っているのだが、
そんな話題は一向に出てこないし、
そもそもこの本のことを知らない人が圧倒的に多いのかなとも思いだした。
昨日「日本の古本屋」を覗いてみたら、
一冊だけとんでもない値段で出されていた。
多分、この本を手に入れるのは相当難しくなってしまったんだろう。
でも、淳さん、紅さんの子供時代が書かれているし、
写真もたくさんも載せられているので、
将来的には、貴重な資料になることは間違いない。
淳さんは四冊め、紅さんは五冊目の歌集を出して、
いよいよ歌人としての地歩をかためているのだから。
どこか、えいっとこの本を再刊しようという出版社は
あらわれないものか。
何せ昨今は「短歌ブーム」という言葉が
巷を闊歩しているのだから。
ひよっとしたら、チャンスかもしれない。




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「短歌研究」4月号の永田和宏さんの30首にこんな歌がある。

「永田淳歌集『光の鱗』を読む」という詞書が付いている。

・息子の歌に初めて泣いたわたくしをよろこんでゐるわたくしがゐる

さて、なぜ永田さんは泣いたのか。
『光の鱗』のどの歌に泣いたのか。
こうなると、探索するしかない。
多分、この歌ではという歌を見つけた。
「30年目のD.C.」と題する一連にこんな歌がある。

・母あらば母の座りてあるはずの席にて父の受賞を見上ぐ

この歌は一連の8首目の歌だが、
1首目の歌に、こんな詞書がある。

「父のハンス・ノイラート賞授賞式のためにまずワシントン 2017年7月」

なお、永田さんは、この「息子の歌に」の後に、
こんな歌を詠んでいる。

・今年五十歳になるのか彼も滑り台の上で泣いてたあの泣き虫が
・小さき灯のやうに暖かな単位として家族はありきメリーランドの日々

この二首から判断しても、
ぼくの推測は当たっているような気がする。
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永田淳さんの第四歌集『光の鱗』(朔出版)にこんな歌がある。

・生涯に島田修三が詠み込みし人名の数だれか数えよ

島田さんの歌には、固有名詞が非常に多く詠み込まれている。
その中でも人名が突出して多い。
これまでに9冊の歌集を出している。
一冊の歌集に100程度詠まれていると考えると、
九冊だから、900程度になる。もう少し多いかもしれないから、
まあ、1,000以上に多分なるだろうね。
それにしてもはたして数える人はいるのだろうか。
前提として歌集を全部持っていないといけないから、
難しいだろうね。
以前「まひる野」の人に島田さんの歌集を全部持っているといったら、
羨ましがられたことがあるから、
「まひる野」の人でも、全冊持っている人はかなり少ないだろう。
暇があれば、一冊くらい数えてみようかという、
愚かな考えもわいてくるが、
実はそんな暇はない。
というより、こうして書いていていいのかという状態。
何せ、今二冊の雑誌の編集中なので。


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今日の「朝日」の「歌壇 俳壇」欄の「うたをよむ」は、
山下翔さんが書いている。
そこで紹介されている歌は、
小高賢さんの死を悼む歌。
古い順にあげていて、
一番新しい歌は、
最近出された永田淳さんの第四歌集『光の鱗』に
載せられている歌である。
「小高さん」と題する6首中の1首である。
因みにぼくの昨年だした『聴雨』にも
小高さんを悼む歌がある。
この二首である。

・会ふたびに厳しき叱咤くれし人建国記念の日早暁に死す
・理不尽と心底おもふ評論の先達たりし小高氏の死は
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二月の末に「鱧と水仙」の60号が届いた。
年二回の刊行だから、30年出し続けてきたのだ。
超結社の同人誌としては、きわめて珍しい例だ。
もちろん、個人誌というなら、佐藤通雅さんの「路上」のような例はあるのだが、
超結社というと、九州の「梁」に続く息の長い雑誌だ。
巻頭は、何と馬場あき子さんの「もしも」と題する8首。
まずこの歌。

・「もしも」といふ仮定きらへどぜひもなしわれは「もしも」の齢を生きをり

8首目はこんな歌。

・ネコカフェの小トラに馴染みまたの日に通へばをかし恋のごとしも

馬場さん、ネコカフェに行くんだと、ちょっとびっくり。

そして12ページには、馬場さんの葉書がそのまま載せられている。
文面はこんな感じ。

「60号おめでとう‼
 歌8首のお招きありがとう。
当坐の戯笑歌一首 お祝いまで

鱧太り
水仙なほも咲きつづけ
瞠りて祝ふ 60号を‼

何というか、とにかくお若い。
精神に老いのかけらも見えない感じ。
こういう融通無碍の精神の有り様はうれしい。
歌を詠みつづけていると、
こういう精神を得られるのかしらと思う。
それとも、やはり個性ということに尽きるの。
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