『燕麦』

2012/07/30

吉川宏志さんの第6歌集『燕麦』(砂子屋書房)が届く。
「燕麦」という歌集題は、次の歌による。

・磨り減りし活字の残るマルクスの文庫のなかにさやぐ燕麦(えんばく)

さてこの歌が何を詠んでいるのか分かる人はどれほどいるのだろうか。
ポイントは「さやぐ燕麦」なのだが。
「あとがき」ではこういうことが書かれている。

「最後に書名について。「燕麦」はたまたま歌の中で使った言葉
なのだが、文字のイメージや音の響きがだんだん好きになってき
て、タイトルにすることにした。ウィスキーの原料になるという
のも嬉しい。小花を包むものがツバメの翼に似ているためにこの
名前があるという。」

これを読んでも、残念ながら先の歌の理解の助けにはならない。
結論から言うと、
「燕麦」は、大月書店発行の国民文庫に用いられたマークの図柄なのだ。
ただ国民文庫は、共産党系の出版社であり、
昔の国民文庫は、大方マルクスやレーニンといった
共産主義関係の文献を網羅した文庫で、
要するに、社会運動に関心のある人しか目にすることのない
文庫なのである。
しかも、今でも国民文庫は細々と生き残っているようだが、
当然それらの文献を掲載したものは、
多分ほとんど絶版ではないかと思う。
今ぼくの目の前にあるのは、
マルクスの『経済学・哲学手稿』である。
昔は「経哲」と言っていたなあ。
運動家のお兄さんが、
マルクスを読むのなら「経哲」からだよなんて言っていたなあ。
最初は何の話しか分からなかったが、
大学の生協で手に入れて読んだのだった。
この手もとにある文庫は、
1968年1月13日発行で、200円。
第7刷。
「疎外された労働」のあたりは面白く読んだ。
もちろんこの手稿の集大成が『資本論』になるわけだ。
吉川さんの歌集の題について書いてきたら、
何と学生時代にタイムスリップしてしまった。
あのころは、それなりにマルクスやレーニンを読んでいた。
マルクスの文献などを読む
勉強会もあったなあ。
そういう勉強会から引き抜かれて、
セクトのメンバーになって、
東京で掴まった仲間もたくさんいた。
あんな学生時代は、
この日本の国には二度と来ないだろう。
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燕麦

はじめまして。校正者です。大月書店の外校正をしています。文庫はやったことがないのですが、やはり学生時代社会科学系(政治学)だったので、岡崎訳資本論は原著第1巻分(第三分冊まで)は読みました。だから、懐かしい。筑摩書房から『マルクス・コレクション』が出ましたが、いまでもこの文庫は名訳(訳者の岡崎夫妻の失踪という悲劇的な最後も手伝って)だと思います。
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