内山晶太歌集『窓、その他』

2012/09/30

内山晶太さんの第一歌集『窓、その他』(六花書林)の
印象を一言で言えば、恐ろしい歌集ということになる。
このことを説明しても、詮無いことなので、
具体例を挙げる。
「割れもの」一連である。
まず冒頭の歌。

・ただよえる花ひとつずつ享け止めつしめやかにして水を病む河

下句実にいいですね。でも、花はどうなるのか。
水を病んでいる河に放たれた花の運命は。
内山くんの歌で、一つだけ不満がある。
内山くんの歌は、歴史的仮名遣いの歌である。
「ただよへる」だったら本当によかったのに。
山田航くんの歌は現代仮名遣いの歌であると思うが、
なぜか歴史的仮名遣いである。
二首目の歌。

・目覚ましを掛けずに眠りゆくことの至福よふかいところまでゆく

まあ、この歌は普通にいい歌。
三首目の歌。

・街川の面(おもて)ひしめくはなびらの舟におぼれて死魚すすみゆく

まさに恐ろしい歌。はなびらの密集した川の面に死んだ魚が浮かんでいるのだ。
しかもこの一団はすすんでいるのだ。
どこへ。
四首目。

・陶製のつめたき馬の首すじに雨すべるさえとおき抱擁

もう絶唱としか言いようがないでしよう。
でも「とほき抱擁」がいいなあ。
五首目。

・なんという日々の小さき抱擁をあるいは生の限界として

この歌も普通にいい歌。
六首目の歌。

・自涜にも準備があるということの水のくらやみ蓮咲(ひら)きおり

これはすごい歌だ。塚本邦雄に読んでもらいたかった歌だ。
あるいは春日井建に。
とにかく下句がいい。
七首目の歌。

・空中をしずみてゆけるさくら花ひいふうみいよいつ無に還る

結句はちょっとお遊び的なところはあるが、
こういう余裕もいい。
八首目、九首目の歌を挙げる。これで一連は終わる。

・割れものの春ようやくに割れてゆく桜花の怒りはてしなき夜を
・気づかれぬよう剥がれたるはなびらは眼窩のごとき壺に降りたり

「桜花の怒り」というのはいいですね。
九首目の下句も実にいい。
とにかく、
この歌集のすごさは読んでもらうしかありませんね。
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