大車輪

2012/10/28

昨日の「中日新聞」の夕刊の
「詩歌への招待」欄に、
内山晶太さんの「大車輪」7首と小文が掲載されていました。
不思議な歌があります。

・妻子ある羽虫と妻子なきわれと街灯の辺に旋回しおり

「羽虫」に妻子があるのかないのかをどう見分けるのだろうか。
それから「われ」はどんなふうに旋回するのだろうか。
いろいろ考えてしまう。

・台所のしろがねのうえオレンジの蔕置かるわがきのう置きたる

小池さんの歌に似ている感じ。
何でもないような歌なのだが、そこがいいのかな。

・大車輪という技あれば人まわりあらわなる夏の脇の下ふたつ

ロンドンオリンピックに触発された歌なのだろうか。
それにしても「脇の下ふたつ」と詠むことは、ありえない。
でも「ふたつ」だから生々しい。

・水面がそこにあるかとホームよりのぞくわたしの夜の線路を

「わたし」が謎。でも「わたし」がなければ普通の歌。

・柿の味に躍動感のなきことをいぶかしみつつ二つ目を剥く

「躍動感」ですか。柿を食べて「躍動感」を感じる。
ついぞなかったなあ。でも、内山さんにはあるのだろう。
いや、正確には〈わたし〉には。
ところでツイッターでは、
内山晶太祭りなるものが開催されているらしい。
ぼくは参加したことがないが、
まだやっているのだろうか。

同じ紙面に、若山牧水賞の受賞者が発表されていた。
大口玲子さんだ。
受賞歌集は『トリサンナイタ』(角川書店)。
率直に嬉しい。
コメントで「県民として」という言葉があって、
大口さんはもう宮崎県民なのだと得心した。
この機会にこの歌集の歌を紹介する。
読みたいなと思った方は購入してください。
税別2571円です。

・これも地震でこはれちやつたよね 子はいちいち立ち止まり指を指し呟けり
・放射線見えなばいかに光るらむ欅並木は雨に濡れつつ
・見えぬものは見ない人見たくない人を濡らして降れり春の時雨は
・避難民となりてさまよふ仙台駅東口みなマスクしてをり
・見送りののち出社する夫見れば寒さうに鼻をかんでゐるなり
・ゆく春の東北よここで生まれたるわが息子を覚えてゐてくれよ
・家が無事なのに仙台を離れたといふやましさをぽちりともらす
・宮崎銀行本店の静寂へ侵入し新規口座の手続きをせり
・なぜ避難したかと問はれ「子が大事」と答へてまた誰かを傷つけて
・仙台をすぐに離れて戻らざる妻をかばひてきみ生きをらむ

震災後の歌だけ挙げました。
そう言えば、
俵さんも同じように仙台を離れて石垣島で
子供さんと暮らしています。
母親としての選択がこれらの歌の主題なのでしょう。

スポンサーサイト
pagetop

コメントの投稿

非公開コメント

pagetop
プロフィール

スズタケ

Author:スズタケ
FC2ブログへようこそ!

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -